●ねらい
皆さんはこれまで政治学の「消費者」であったことだろう.この講義では,政治学の「生産者」となるためには,いかなる考え方や技能を取得しなければならないかを考えていく.政治学の論文を書くとはいかなる営為なのか,論文を書くために求められる作業にはいかなるものがあるのか,そもそもよい論文とはどういったものなのかといった問いが,この授業の検討対象である.
学問分野としての政治学方法論とは,現代政治の実証分析における実証の作業,手法に関する「科学性」をいかにして担保するかを論じるものである.しかし,この講義においては,二つの点でいわゆる政治学方法論よりも広い課題を扱う.第一に対象とする領域を広げる.現代政治の実証研究を主たる念頭に置くものの,歴史研究や思想研究における方法論についても扱う.実証研究を行うものにとっても,歴史や思想の研究を志すものにとっても,隣接領域の方法論を知ることは,自らの方法論を相対化し,その特徴を理解する上で有益である.第二に対象とする作業を広げる.実証研究の方法のみならず,そもそもいかにして問いをたてるのか,どのように読書をするのか,どのように論述を進めるのかといった前提となる一連の作業についても扱う.
●進め方
初回と2回目は,担当者が,先行研究を読む上でのポイントを解説していく.
3回目以降は,現代日本政治についての先行研究を多読していく. 課題文献はいずれも日本政治学会の年報『年報政治学』に掲載された若手(執筆当時)の主として投稿論文から取り上げることとした.04年までの論文については,電子化されておりダウンロードが可能である.
各自の作業は,文献を読んでA4一枚(厳守)のメモを作成し,参加者全員に前日中にメールで流すこと.なお,日本政治を素材とするが,あくまで方法論の講義なので,日本政治そのものについての議論はおこなわない.受講者にも日本政治についての知識などは求めていない.
各回の講義では,報告者を定めず,ディスカッションを進めていく.課題文献のコピーは用意しないので,各自が用意すること.
●講義計画と課題文献
4月14日:先行研究を読むとはいかなる行為なのか(1)理論編
4月21日: 先行研究を読むとはいかなる行為なのか(2)例示編
成長と自由化の政治的条件:池田政権期の政治経済体制,福元健太郎,00
4月28日:予備日(次回以降の準備)
5月12日:実践1
中小企業政策と選挙制度 建林 正彦,97
5月19日:実践2
政策の連続と変容 -日本医療制度の構造-,衛藤 幹子,97
日米半導体摩擦における「数値目標」形成過程,大矢根 聡 ,97
5月26日:実践3
参議院議員は衆議院議員よりもシニアか? 福元 健太郎,03
小選挙区比例代表並立制の存立基盤―3回の議員調査の結果から―濱本真輔,09-I
6月2日:実践4
知事選投票率からみた広域政府の規模のあり方に関する研究,野田遊, 05-II
コモンズのルールとしての景観条例,伊藤修一郎,03
6月9日:実践5
自律性と活動量の対立,京俊介,09-I
事業廃止の政治学―都道府県のダム事業を対象に― 砂原庸介, 08-II
6月16日:中休み
6月23日:実践6
地方制度改革と官僚制,木寺元, 08-II
6月30日:実践7
党首選出過程の民主化-自民党と民主党の比較検討-上神貴佳, 08-I
政治的知識と投票行動-「条件付け効果」の分析-今井亮佑, 08-I
7月7日:実践8
政権安定性と経済変動:生存分析における時間変量的要因,増山 幹高,02
7月14日:実践9
新しい制度論と日本官僚制研究, 建林 正彦, 99
7月21日:予備日