1.授業のテーマと到達目標
この講義は,ゲーム理論の初歩を解説した上で,実際にそれを用いて政治現象の分析を試みるものである.
履修者の到達目標は,第一に,ゲーム理論の基本概念を理解し,均衡を導出できるようになることである.第二に,ゲームの構成要素を理解し,実際の政治現象をモデル化できるようになることである.
この講義は,ゲーム理論の数学的な厳密さを追求することよりも,ゲーム理論の基本的な概念,たとえばナッシュ均衡といったものが,いかなるものなのか,それをいかにして見出すか,それをいかに解釈するかといったことを,受講生が自分自身で十分に考え抜くことができるようにするためのものである.数学的に厳密なゲーム理論の理解を得るためには,よりアドバンスドな関連科目をあわせて取得されたい.
2. 授業の概要と計画
前半は次の論点を説明していく.講義は説明を与えた後,受講生による例題の解答などを行ってもらうインタラクティブなものとなる.予習は必要ないが,講義中の積極的な参加が求められる.
1:イントロダクション:ゲームとは何か
2:ゲームの要素:プレイヤー,行動プロファイル,帰結関数,情報,選好
3:戦略型のゲーム:支配戦略.ナッシュ均衡
4:展開型のゲーム:後戻り推論.サブゲーム完全均衡
5:混合戦略
6:繰り返しゲーム
後半では,受講生が関心を持つ政治事象について,それをどのようにモデル化していくことができるかを,全員で検討していく.ここでも担当教員は適宜助言を与えるが,取り扱う事象を決めるのも,モデル化の作業を行うのも受講生諸君であり,積極的な参加が求められる.講義終了までに,講義で得た知識を用いて具体的な事象を取り上げ,分析を行ったレポートを作成してもらう.
3. 成績評価と基準
講義への参加と作業への貢献の程度(60%)
レポートの提出とその内容(40%)
4. 履修上の注意(関連科目情報等を含む)
この講義は,法学研究科科目「政治学方法論特殊講義II」と法学部科目「日本政治応用研究」の合同科目である.大学院,学部の区別なく,政治学のための基礎的なゲーム理論分析について学習してもらうために開講されるものである.
学部生の場合,応用研究科目であるので,履修者数の上限が設定されている.またそのため,初回の講義の際,所定の手続きが必要である.学生便覧と学生掲示板に従い手続きを行うこと.手続き未了の場合は履修を認めない.
5. 学生へのメッセージ
政治的な営みに関心を持ち,抽象的ではありつつ確固とした思考法を修得したい諸君の参加を期待する.
6. 教科書参考書
教科書は用いない.
もし,これまでゲーム理論について全く触れたことがない者は,下記の入門書のいずれかを事前に読んでおくこと.
A・ディキシット,B・ネイルバフ『戦略的志向とは何か』阪急コミュニケーションズ,1991年.
梶井厚志『戦略的志向の技術』中公新書,2002年.
講義の水準は以下のテキストと同程度に設定する.したがって,講義内容を補完する上で,下記の教科書は有効であろう.
岡田章『ゲーム理論・入門』有斐閣,2008年.
渡辺隆裕『ゼミナール ゲーム理論入門』日本経済新聞社,2008年.
佐々木宏夫『入門 ゲーム理論』日本評論社,2003年.