- 目標
- 現代社会では,NPOなどのサードセクターやボランタリズムの役割が拡大しているとしても,依然として,公共政策を形成し,執行していく活動の中心は行政機構である.この講義は,行政学の知見に基づきながら,行政機構のいかなる特徴が,どのような政策帰結に結びついていくのか,それが私たちの社会や経済にどのような影響を及ぼすのかということと,それではそのような特徴はどのような要因によって生じているのか,それに対する改革の試みはいかなるものであるのかということを明らかにしていく.とりわけ,他国との比較を行うことで,日本の行政機構の特徴を捉えていくことに主眼を置く.
- 課題
- 毎回の課題文献について,リアクションペーパーを作成する(A4一枚:文献の要旨と疑問点,論点の提示).毎回の講義冒頭に提出する(出席の確認を兼ねる;合計で40点).講義はそこで示された疑問点,論点の検討によって進めていく.
- 学期終了までに,タームペーパーを執筆する(60点).各回のテーマの中から一つを選び,関連する研究を読むことで先行研究のレビューを行うか,具体的な事象についての事例分析,あるいは計量分析を行うことでも,いずれでも構わない.日本語で9千字(A4で8頁)程度.2月10日〆切(提出方法は追って指示する).
- リアクションペーパーとタームペーパー全体を通じて,希望者には,各人へのフィードバックを行う(A4一枚程度の書面での講評ないし30分程度の口頭での講評とディスカッション).2月下旬から3月上旬を予定している.
- 各回の内容と課題文献
- 10月5日 イントロダクション
- 10月15日:月曜講義日だが休講とする
- 10月19日:政府部門と民間部門の関係;(曽我 2013),第4部
- 10月26日;公務員数の少なさとその原因・帰結;(前田2014)
- 11月2日;日米の規制緩和の比較;(秋吉2007)
- 11月9日:中央地方関係;曽我(2013),第3部
- 11月16日;地方制度のバリエーション;(山下 2010)
- 11月30日;地方財政の日英比較;(北村亘 2008)
- 12月7日;行政組織;曽我(2013),第2部
- 12月14日;組織形態の比較分析;(Hall and Soskice 2001)
- 12月21日;行政組織の違いの起源;(Silberman 1993)
- 12月28日;政治と行政の関係;曽我(2013),第1部
- 1月4日:任用制などの四ヵ国比較;(村松 2008.)
- 1月18日;政治任用の原因と帰結;(Lewis 2008)
Hall, Peter A., and David Soskice. 2001. Varieties of Capitalism: The Institutional Foundation of Comparative Advantage. Oxford: Oxford University Press.遠山弘徳・安孫子誠男・山田鋭夫・宇仁宏幸・藤田菜々子(訳)『資本主義の多様性:比較優位の制度的基礎』(ナカニシヤ出版,2007年).
Lewis, David E. 2008. The Politics of Presidential Appointments: Political Control and Bureaucratic Performance.Princeton University Press. 稲継裕昭(監訳)・浅尾久美子(訳)『大統領任命の政治学:政治任用の実態と行政への影響』ミネルヴァ書房,2009年.
Silberman, Bernard S. 1993. Cages of Reason: The Rise of the Rational State in France, Japan, the United States, and Great Britain. University of Chicago Press. 日. 武藤博己ほか(訳)『比較官僚制成立史 : フランス, アメリカ,イギリスにおける政治と官僚制』三嶺書房, 1999年.
山下茂. 2010. 『体系比較地方自治』 ぎょうせい.
秋吉貴雄. 2007. 『公共政策の変容と政策科学:日米航空輸送産業における2つの規制改革』有斐閣..
前田健太郎. 2014. 『市民を雇わない国家 : 日本が公務員の少ない国へと至った道』 東京大学出版会.
曽我謙悟. 2013. 『行政学』有斐閣.
村松, 岐夫(編著). 2008.『公務員制度改革:米・英・独・仏の動向を踏まえて』学陽書房.
北村亘. 2008. 『地方財政の行政学的分析』有斐閣.