京都大学・学部・行政学14

 

試験問題

次の(1)と(2)のいずれかを選択し,解答しなさい.解答に際しては,冒頭に選択した番号を記載しなさい.なお,余事記載があった場合は不可とする.

(1)次の三つの語句について,それぞれ説明を加えなさい.配点は記述内容について各25点(小計75点),全体を通じての論理構成や文章表現に対する加点が25点.

福祉の磁石

NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)

内閣官房

(2)現在日本の行政の特徴を一つないし複数取り上げ,それがいかなるものであり,いつ頃,いかにして形成されたのか,さらにその特徴をいかなる具体的な事例に見いだすことができるか,また,それについてどのような学術研究が存在するかをあわせて論じなさい.事例ならびに研究については,講義や教科書で取り上げた以外のものでも構わない.配点は100点.

それぞれの成績の取得者数

優   54名

良   241名

可   48名

不可(含む欠席) 118名

履修登録者461名中の単位取得率 74.4%

採点基準と講評

(1)は正確な知識を修得しているのか,(2)は大きなポイントを理解した上で,それを具体的な事象や学術的な研究と結びつけて理解しているのかを確認する問題です.(1)は広い範囲について基礎的な知識を理解していれば,(2)は特定の側面について深く理解をしていれば,十分に解答可能な問題です.いずれについても,単位付与の絶対基準をクリアーしているものに対して,9段階で相対評価をつけ,80点台が15%,70点台が70%,60点台が15%と概ねなるように,各段階に点数を割り当てました.

(1)と(2)のいずれをも解答している場合は,(点数を与えないという選択肢もあり得たのでしょうが)(1)について採点を行った上で,一段階評価を下げるという措置をとりました.

(1)については,3つの項目すべてについて,教科書に書かれている内容を不足なくまとめれば,70点台を与えました.ただし,多くの答案は,いくつかの要素を欠落させているものに留まりました.たとえば,NPMについていうのならば,その定義を述べるだけではなく,具体例としてのPFIや民間委託,日本における導入の事例などまで述べることを求めています.

(2)については,特徴,その歴史的形成,具体的な事例,関連する研究の四ついずれも挙げた上で,それらの関連を論理的に展開していれば,80点台を与えています.特徴として複数のものを挙げている場合は,それぞれについて採点をした上で,最も高い点をつけた特徴の点数を全体の点数としています(たとえば三つの特徴を述べた答案において,特徴1についての採点が75点,特徴2は70点,特徴3は78点であったならば,その答案の点数は78点とする).1つないし複数の特徴を挙げることを求めているのであり,「できるだけ多くの」特徴を挙げるよう求めているのではないのですから,散漫な形で,多くの特徴について述べたところで十分な解答とはなりません.

用語や概念をともかく羅列している解答が散見されましたが,そうした答案は字数あたりの得点効率が悪い結果に終わっているだろうと思います.分析枠組みや概念の説明をしただけで,それが日本の行政の特徴と結びつけられていないものにも,点を与えていません.事例とは具体性を持ったもの,いつどこで誰が何をしたという事実の記述をさすのであり,具体性を欠いた記述では不十分です.また,学術研究の例として教科書を挙げているものがありましたが,教科書は学術研究そのものではありません.

講義で修得した内容を,自分自身による情報の収集や読書と結びつけることで深めた上で,論理的な思考に基づいて,概念や事実について述べることができるようになっていって欲しいと思います.


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