京都大学・公共政策大学院・量的分析16

  • 講義の概要・目的

量的なデータに基づいて,政策分析を行えるようになるよう,実践的に,データ分析に取り組んでいく講義である.統計ソフト(Stataを講義では用いるが,それ以外でも構わない)を用いて,統計分析を実際に実施していく.

統計学そのものについては,他の講義に譲る.政策分析の視点そのものについても,他の講義に譲る.

ただし後者に関しては,この講義は,京都府政策企画部との連携を試みるので,それを通じて補完する.政策活動について府職員からの知見の提供,分析内容にかかわるデータの提供の可能性,分析結果に基づく政策提案を知事に直接提示する機会が設けられている.積極的な参加をお願いしたい.

  • 到達目標

自身のリサーチクエスチョンを立て,仮説を構築し,量的なデータの収集と統計分析を通じて検証することができるようになること.

  • 授業計画と内容
  1. 回帰分析とは何か
    • 4月13日;統計ソフトを使ってみる;データの入力の仕方,ログの取り方,ファイルの操作の仕方,変数の扱い方
    • 4月20日;相関と回帰を実感する;サンプルデータを分析しながら,両者の違いを捉える
    • 4月27日;重回帰分析を理解する;統制変数を入れることにどのような意味があるのか,実際の分析を通じて理解する
  2. 問いの立て方と仮説の構築
    • 5月11日;課題文献=伊藤修一郎『政策リサーチ入門』第1章と第2章に基づくディスカッション
    • 5月18日;各自が問いを持ち寄り,仮説を構築していくワークショップ
    • 5月25日;伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』第2章,第4章ならびに伊藤氏のデータセット(http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20120085/EHA.html)を検討する.
  3. データの収集
    • 6月1日;データセットの構築;どのような形でどのようなデータが入手できるか,情報を共有する
    • 6月8日;データの記述統計;データの分布などを伝えるために,どのような表や図を作成するとよいかを理解する
    • 6月15日(予備日=進捗状況によって内容を調整する)
  4. 仮説の検証と報告
    • 6月22日;検証のための分析手法の確認;仮説とデータに応じ適切な検証方法を確認する
    • 6月29日;各自の作業を通じて出てきた問題点に基づくワークショップ
    • 7月6日;分析結果のプレゼン1
    • 7月13日;分析結果のプレゼン2
    • 7月20日;分析結果のプレゼン3
  • 履修要件

統計分析の実習を行うため(PCの台数が20台のため),原則として人数を20名に制限する.ただし自分のPCを持ち込む者がいる場合は,25名まで受け入れる.初回講義の際に状況を確認の上,人数が超過している場合は,抽選により履修者の決定を行う.

  • 成績評価の方法・観点及び達成度

3回課す小レポート(各15点)と,最終レポート(55点)の内容に基づき評価する.小レポートは,上記授業計画の1から3の作業についてまとめたもの,最終レポートは4の結果をまとめたものを中心に,自身の考察を加えたものを求める.

 

京都大学・公共政策大学院・比較行政分析16

  • 目標と方法

サブスタンシブな目標は,行政学の中心的なテーマについて,網羅的に扱いつつ,現代日本の行政の特徴を理解することである.スキル面での目標は,政治学分野の学術文献を読解・検討し,それに基づいて議論が行えるようになることである.

具体的には,比較の手法を用いて,行政に対する経験分析を行っている文献(毎回,教科書の概説2章ほど+論文2本程度)に対する検討を行っていく.比較の方法としては,各国間比較もあれば,一国内での自治体間比較,政策領域間の比較,あるいは時系列比較など,多様な比較の手法を対象とする.また,計量を用いた比較,事例を用いた比較の双方を扱う.

毎回の講義においては,特に報告者を定めることなく,参加者からの疑問点,論点の提示に対し,ディスカッション形式で議論を行う形で検討を進めていく.

  • 課題

毎回の課題文献について,リアクションペーパーを作成する(A4一枚程度:疑問点と論点の指摘;要約などは不要).毎回の講義終了時に提出する(出席の確認を兼ねる;合計で39点).講義はそこで示された疑問点,論点の検討によって進めていく.

学期終了までに,タームペーパーを執筆する(61点;平均的な水準のものに対し40点を与える).各回のテーマの中から一つを選び,関連する研究を読むことで先行研究のレビューを行うか,具体的な事象についての事例分析,あるいは計量分析を行うことでも,いずれでも構わない.日本語で8千字(A4で7頁)程度.提出方法と提出日は追って指示する.

リアクションペーパーとタームペーパー全体を通じて,希望者には,各人へのフィードバックを行う(30分程度の口頭での講評とディスカッション).2月下旬から3月上旬を予定している.

  • 各回の内容と課題文献

10月3日 イントロダクション;太田(2014)

10月17日:政官関係;蒔田(2014),待鳥(2015),曽我(2013)1-2章

10月24日:政策決定過程の構造;河合(2012),高松(2004),曽我(2013)3章

10月31日;政治・行政関係の帰結;武蔵(2009),上野(2010),曽我(2013)4章

11月7日;組織とその行動;手塚(2013),原田(2014),曽我(2013)5章

11月14日:人事の実態;林(2015),前田(2016),曽我(2013)6章

11月28日;行政組織の独立性;青木(2015), 藤田(2012),曽我(2013),7,8章

12月5日;政府間関係(垂直);北村(2008),久米(2000),曽我(2013)9,10章

12月12日;政府間関係(水平);伊藤(2005),野波ほか(2014),曽我(2013)11,12章

12月19日;福祉国家;北山(2003),稗田(2014),曽我(2013)13章

12月26日;規制改革;秋吉(2010),深谷(2012),曽我(2013)14章

1月4日:月曜講義日であるが,休講とする.

1月16日;政策の効果と評価;田辺(2006),松林・上田(2013),曽我(2013)15,16章

1月23日;制度変化;村上(2015),砂原(2011)

〔文献リスト〕

青木 栄一. 2015. 「警察行政・消防行政との比較からみた教育行政の独立性」『日本教育経営学会紀要』57: 24-39.  http://ci.nii.ac.jp/naid/110009999339

秋吉 貴雄. 2010. 「規制政策の政策管理システムをどのように構築するか? : 第一次電気通信規制改革過程の日英比較分析を通じて」『熊本大学社会文化研究』8, 1-9.  http://reposit.lib.kumamoto-u.ac.jp/handle/2298/14651

伊藤 修一郎. 2005. 「先行自治体の政策過程分析–金沢市と神戸市による景観条例制定を事例として」『論叢』2: 61-86. https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=7398&item_no=1&page_id=13&block_id=83

上野 淳子. 2010. 「東京都の「世界都市」化戦略と政治改革: 開発主義国家がネオリベラル化するとき」『日本都市社会学会年報』28: 201-217. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpasurban/2010/28/2010_28_201/_pdf

太田 有子. 2014. 「資源ガバナンスの比較地域分析:陶磁器業の生産流通制度をめぐる関係性の形成と変容」『社会学評論』65, 1: 16-31.

河合 晃一. 2012. 「通商政策過程における制度の役割 -農産物の自由化をめぐる二国間交渉の事例間比較」『公共経営研究e』6, 1-27.  http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/38593

北村 亘. 2008. 「中央地方関係から見た日本の財政赤字」『年報政治学』2008, 2: 11-36.  https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/59/2/59_2_11/_article

北山 俊哉. 2003. 「土建国家日本と資本主義の諸類型」『レヴァイアサン』32, 123-146.

久米郁男. 2001. 「機関委任事務制度はいかなる政策効果を持っていたのか:幼稚園行政と保育行政の比較を手がかりに」『季刊行政管理研究』94: 22-32.

砂原 庸介. 2011. 「自己強化する制度と政策知識 : 医療保険制度改革の分析から」『大阪市立大学法学雑誌』57, 3: 287-323.

曽我謙悟. 2013. 『行政学』有斐閣.

高松 淳也. 2004. 「社会資本整備の政治過程における決定のルールとアリーナ–整備新幹線と空港整備をケースとして (特集 比較政治学と事例研究)」『レヴァイアサン』35: 59-85.

田辺 国昭. 2006. 「政策評価制度の運用実態とその影響」『レヴァイアサン』38: 86-109.

手塚 洋輔. 2013. 「事後検証機関の設置形態とその変化」『現代社会研究』16, 5-18.  http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/handle/11173/1541

野波 寬・土屋 博樹・桜井 国俊. 2014. 「Nimbyとしての在日米軍基地をめぐる多様なアクターの正当性:公共政策の決定権に対する当事者・非当事者による承認過程」『実験社会心理学研究』54, 1: 40-54. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp/54/1/54_1211/_pdf

林 嶺那. 2015. 「東京都における人事管理の研究 : 稲継モデルを手掛かりとして」『国家学会雑誌』128, 1: 119-190.

原田 久. 2014. 「政策類型と官僚制の応答性 : パブリック・コメント手続を素材にして」『立教法学』90: 144-161.  https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=10797&item_no=1&page_id=13&block_id=49

稗田 健志. 2014. 「左派・右派を超えて? : 先進工業21カ国における育児休業制度の計量分析」『レヴァイアサン』55: 87-117.

藤田 由紀子. 2012. 「原子力と食品の安全 : 行政組織の独立性・専門性・セクショナリズム」『専修大学法学研究所紀要』37, 3-36.  http://ir.acc.senshu-u.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=3831&item_no=1&page_id=13&block_id=52

深谷 健. 2012. 「規制緩和過程のセクター間比較分析 : 航空・石油・通信セクターを素材として」『年報行政研究』47: 115-133.

前田 貴洋. 2016. 「自治体における人事異動の実証分析 : 岡山県幹部職員を事例として」『法学会雑誌』56, 2: 343-391.

蒔田 純. 2014. 「政治任用の制度的・機能的発達に関する比較分析 : 日米英仏を事例として」『年報公共政策学』8: 125-144.  http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/59393

待鳥 聡史. 2015. 「官邸権力の変容 : 首相動静データの包括的分析を手がかりに」『選挙研究 : 日本選挙学会年報』31, 2: 19-31.

松林 哲也・上田 路子. 2013. 「福祉・経済政策と自殺率 : 都道府県レベルデータの分析」『日本経済研究』69: 96-109.

武蔵 勝宏. 2009. 「文民統制の変容と防衛省改革」『同志社政策科学研究』11, 2: 163-181.

村上 聖一. 2015. 「戦後日本における放送規制の展開 : 規制手法の変容と放送メディアへの影響」『NHK放送文化研究所年報』59, 49-127.

京都大学・学部・行政学15

経済学部試験問題

問題 次の問1および問2に解答せよ.解答の順序は問わないが,冒頭に問番号を明記しなさい.配点は問1が60点,問2が40点である.

問1 官庁Aと議会Lによる政策形成ゲームを考える.官庁,議会の双方とも政策結果xから効用を得る.それぞれが最も好む理想点xA, xLから,政策結果xが離れるほど効用は減少するので,と表現できる.計算の便宜のため,xL=0, xA≧0とする(一般性は失われない).また,現状をx0とする.

このとき,次の二つの政策形成における権限配分の下で,いかなる政策帰結pが生じるか,部分ゲーム完全均衡の解を求めなさい.その上で,二つの権限配分の違いがいかなる政策帰結の違いをなぜもたらすのか,検討を加えなさい.

  • 官庁Aが現状に対する政策案pAを提示し,議会Lがそれを採決するか否決するかを決める.採決すれば帰結はpAであり,否決した場合はx0である.
  • 官庁Aが政策変更を開始するか否かを選択する.政策変更が開始された場合は,議会Lが最終的な政策pを決める.開始されない場合は現状が維持される.

 

問2 情報共有型組織と機能特化型組織の違いについて述べた上で,日本の行政組織の特徴を,これらの概念を用いて,日本の民間企業との比較も加えて,説明しなさい.

 

法学部試験問題 

問題 次の問1および問2に解答せよ.解答の順序は問わないが,冒頭に問番号を明記しなさい.配点は問1が40点(各小問10点),問2が60点である.

問1 次の語句について簡潔に説明しなさい.

提案権には七分の利

国家安全保障局

首相の大統領制化

アカウンタビリティとリスポンシビリティ

 

問2 情報共有型組織と機能特化型組織の違いについて述べた上で,日本の行政組織の特徴をこれらの概念を用いて説明し,さらに,そのことが日本の行政組織の編成や公務員制度にどのような影響を与えてきたと考えられるか述べなさい.

神戸大学・学部・行政学15

試験問題

以下の二つの問に答えなさい.

問1 2012年に成立し現在に至る自民党安倍政権の特徴は,行政学の観点から見て,いかなるものと捉えられるだろうか.講義内容を基礎としながら,できるだけ多面的に,また具体的に論じなさい.(配点60点)

問2 現在の日本が抱える課題のうち,日本に特徴的な組織形態が原因の少なくとも一部をなしていると思われるものを指摘した上で,今後の展望,すなわち課題解決の可能性の存否やその条件などについて,講義内容を基礎としながら,自由に論じなさい.(配点40点)

京都大学・公共政策大学院・比較行政論15

  • 目標
    •  現代社会では,NPOなどのサードセクターやボランタリズムの役割が拡大しているとしても,依然として,公共政策を形成し,執行していく活動の中心は行政機構である.この講義は,行政学の知見に基づきながら,行政機構のいかなる特徴が,どのような政策帰結に結びついていくのか,それが私たちの社会や経済にどのような影響を及ぼすのかということと,それではそのような特徴はどのような要因によって生じているのか,それに対する改革の試みはいかなるものであるのかということを明らかにしていく.とりわけ,他国との比較を行うことで,日本の行政機構の特徴を捉えていくことに主眼を置く.
  • 課題
    • 毎回の課題文献について,リアクションペーパーを作成する(A4一枚:文献の要旨と疑問点,論点の提示).毎回の講義冒頭に提出する(出席の確認を兼ねる;合計で40点).講義はそこで示された疑問点,論点の検討によって進めていく.
    • 学期終了までに,タームペーパーを執筆する(60点).各回のテーマの中から一つを選び,関連する研究を読むことで先行研究のレビューを行うか,具体的な事象についての事例分析,あるいは計量分析を行うことでも,いずれでも構わない.日本語で9千字(A4で8頁)程度.2月10日〆切(提出方法は追って指示する).
    • リアクションペーパーとタームペーパー全体を通じて,希望者には,各人へのフィードバックを行う(A4一枚程度の書面での講評ないし30分程度の口頭での講評とディスカッション).2月下旬から3月上旬を予定している.
  • 各回の内容と課題文献
    • 10月5日 イントロダクション
    • 10月15日:月曜講義日だが休講とする
    • 10月19日:政府部門と民間部門の関係;(曽我 2013),第4部
    • 10月26日;公務員数の少なさとその原因・帰結;(前田2014)
    • 11月2日;日米の規制緩和の比較;(秋吉2007)
    • 11月9日:中央地方関係;曽我(2013),第3部
    • 11月16日;地方制度のバリエーション;(山下 2010)
    • 11月30日;地方財政の日英比較;(北村亘 2008)
    • 12月7日;行政組織;曽我(2013),第2部
    • 12月14日;組織形態の比較分析;(Hall and Soskice 2001)
    • 12月21日;行政組織の違いの起源;(Silberman 1993)
    • 12月28日;政治と行政の関係;曽我(2013),第1部
    • 1月4日:任用制などの四ヵ国比較;(村松 2008.)
    • 1月18日;政治任用の原因と帰結;(Lewis 2008)

Hall, Peter A., and David Soskice. 2001. Varieties of Capitalism: The Institutional Foundation of Comparative Advantage. Oxford: Oxford University Press.遠山弘徳・安孫子誠男・山田鋭夫・宇仁宏幸・藤田菜々子(訳)『資本主義の多様性:比較優位の制度的基礎』(ナカニシヤ出版,2007年).

Lewis, David E. 2008. The Politics of Presidential Appointments: Political Control and Bureaucratic Performance.Princeton University Press. 稲継裕昭(監訳)・浅尾久美子(訳)『大統領任命の政治学:政治任用の実態と行政への影響』ミネルヴァ書房,2009年.

Silberman, Bernard S. 1993. Cages of Reason: The Rise of the Rational State in France, Japan, the United States, and Great Britain. University of Chicago Press. 日. 武藤博己ほか(訳)『比較官僚制成立史 : フランス, アメリカ,イギリスにおける政治と官僚制』三嶺書房, 1999年.

山下茂. 2010. 『体系比較地方自治』 ぎょうせい.

秋吉貴雄. 2007. 『公共政策の変容と政策科学:日米航空輸送産業における2つの規制改革』有斐閣..

前田健太郎. 2014. 『市民を雇わない国家 : 日本が公務員の少ない国へと至った道』 東京大学出版会.

曽我謙悟. 2013. 『行政学』有斐閣.

村松, 岐夫(編著). 2008.『公務員制度改革:米・英・独・仏の動向を踏まえて』学陽書房.

北村亘. 2008. 『地方財政の行政学的分析』有斐閣.

神戸大学・学部・比較政治応用研究10

  • 目的

『政権交代の研究』をテーマとする.なぜ昨年の民主党への政権交代は生じたのか?それにより何が変わったのか,あるいは変わらないものは何なのか?過去の政権交代や他国での政権交代と比較すると何が見えてくるのか?このような政権交代に関する様々な疑問があるはずである.参加者は各自が問題設定を行い,文献や聞き取り調査を元に分析を加える.分析結果について口頭での報告とリサーチペーパーの執筆を行う.

一連の作業を通じて目標とするのは,以下の四点である.

(1)現代日本の政治や行政について,各自が問題意識を持つこと.

(2)問題の設定,それに対する回答の提示という「研究」の基本的な方法論を,実際に経験すること.

(3)文献や聞き取り調査によって,政治や行政の実態を自ら「つかむ」こと.

(4)口頭報告と文章という二つの異なる方式で,自らの問題意識や調査結果を他者に「伝える」こと.

 

  • 内容

講義は大きく四つの部分からなる.

第一は,全体の方向性を理解し,テーマについての関心を育てるパートである.まず,教員あるいはティーチング・アシスタントによる講義のねらいと進め方についてのイントロダクションを行う.

第二に,政権交代に関する様々な問いのうち,どのような具体的な問題を取り上げるのか,なぜ,その問題を取り上げるのかを考え,まとめ,そして,他者に伝えることを行う.

次に第三に,実態調査を進めていく.情報をどのように集めるのか,それをどのようにまとめあげていくのか,それを通じて自分の設定した問題に対して,いかなる回答を提示するのかを考え抜いてもらう.

最後に第四に,研究の成果を二つの方法でプレゼンテーションしてもらう.一つは,口頭での報告である.もう一つは,文章によるものである.執筆されたペーパーは冊子としてまとめることを予定している.

まとめ直すと,第一部のみは,受講生は教員の話を聞きながら,質疑応答をしていくという役割になるが,第二部以下は,受講生の側が主体的に研究を行っていくことになる.そこでは,各自は二回の口頭報告の機会を持つ.自分の報告以外の回では,他者の報告に対して積極的に意見交換を行うことが求められる.また,講義以外の時間で相当の時間とエネルギーを費やすことが求められる.問題の設定,実態調査,口頭報告の準備とリサーチペーパーの執筆は,いずれも講義の時間外に行われるのであり,相応の負担となることを覚悟されたい.

 

  • 日程

4月9日;教員によるイントロ

4月16日;TAによるテーマの示唆;受講許可カード,提出締め切り

(4月23日は授業はスキップ;報告準備にあてる)

一回目の報告

4月30日;5月7日;5月14日;5月21日,5月28日(計5回)

二回目の報告

6月4日,11日,18日,25日,7月2日,9日,16日(計7回)

  • 評価方法

2回の口頭報告,リサーチペーパーの内容(80%)

毎回の質疑応答への参加の程度(20%)

神戸大学・法学部・行政学11

問題

講義内容を参考にしながら,20世紀以降現在までの日本の行政の変化とその要因について論ぜよ.論述に際しては,(1)政府と市場の関係と(2)政治と行政の関係に分け,また,適宜時期区分を行いなさい.」

評価結果

優34名

良45名

可29名

不可および欠席46名(単位取得率70.13%)

神戸大学・法学部・行政学12

試験問題

問 現在の日本が抱える課題を一つ取り上げ,行政機構がその課題の発生とどのような関係にあるのか,その課題を解決するために行政機構がどのような行動をとってきたのか(あるいはとってこなかったのか),そして今後の解決の方策としてどのようなものが考えられるのかを,講義内容に基づきながら論述せよ.

なお,採点に際しては,正しい記述について加点を行うとともに,誤った記述については減点を行う.また,論点相互の連関が適切に示されている場合にも加点を行う.余事記載を行った場合には,零点とする.

評価結果

優45名

良66名

可42名

不可および欠席41名(単位取得率78.9%)

神戸大学・学部・行政学13

成績評価について

つぎの五つの課題について,それぞれ24点満点(4点はボーナス;当初締切日以降に提出したものについては,ボーナスはつけない)で採点を行った.その合計に基づきつつ,五つとも提出した場合には最低でも60点となるよう,また合計が100点を超えたものはそれ以下となるよう,点数調整を行った上で, 最終成績とした.

それぞれの成績の取得者数

秀   18名

優   38名

良   62名

可   36名

不可 23名(単位取得率87.0%)

課題1 

新聞のデータベースや文献を用いて,現代日本(国でも地方でもかまわない)の政治と行政の関係の実態を示している事件や事象を探して,その経緯を記述しなさい.その上で,その事件・事象が PA 関係の四類型(過剰統制,破綻,常態,理想型)のいずれにあてはまるのかを述べなさい.可能ならば,その理由は何かについての考察や複数事例の比較を行いなさい.

課題2 

2章で述べた戦後日本の政治と行政の関係を題材にして,

(1)3 章で説明した三つの I による説明によって,どのように理解することができるのか述べ なさい(三つの I のうち一つ,二つ,ないし全てのいずれでもかまわない).

(2)4 章で説明した行政責任の概念については,どのように理解することができるか述べなさい.

課題3 

任意の自治体(今,住んでいるところや出身地など)を選び,職員数,予算規模,組織編制(組織図)を調べ,中央府省のそれと比較しなさい.可能であれば,異同の原因についても検討しなさい.

課題4 

行政に関する書物を一冊選び(思いつかない人は,教科書の読書ガイドと参考文献リストを参照),その本の書評を書きなさい.

課題5 

 日本の公務員数,とりわけ国家公務員数は,なぜ国際的に比較しても非常に少ないのか.できるだけ多くの論点を取り上げながら,論じなさい.

講評

 十分な調査と検討に基づく素晴らしいものが相当数見受けられる一方で,限定的な時間と労力のみで作成したものも,また多く見受けられました.適切な段落分け,冒頭の一字下げなど,文章表現の極めて基礎的な部分ができていないものも残念ながら一定数,存在しています.

以下,課題ごとに気づいた点を記しておきます.

課題1については,典拠を明確に書いていないものがありました.その場合,評価を下げています.複数事例の比較を行ったものに,高い評価を与えました.

課題2は,再整理を十分行うことができず,要約を記述するのに留まっているものが多く見受けられました.

課題3については,単純に中央府省と自治体を比較するのではなく,人口あたりに換算するなど適切な工夫を加えて比較を行っているものに,高い評価を与えました.

課題4については,力作が多く,読んでいて非常に楽しかったです.本格的な研究書をとりあげた人も多くいました.他方で残念ながら,著者が述べていることと,評者(あなたたち)の見解が一見して区分できないような書き方をしているもの,要約に留まるもの,逆に全く内容紹介がないものが見受けられました.

課題5については,出来具合のばらつきが少なかったです.どのような意味において公務員数が少ないといえるのか問い直したり,時系列的な変化の視点も取り入れるなど,自分自身で検討を加えたものに高い評価を与えました.

 

京都大学・学部・行政学14

 

試験問題

次の(1)と(2)のいずれかを選択し,解答しなさい.解答に際しては,冒頭に選択した番号を記載しなさい.なお,余事記載があった場合は不可とする.

(1)次の三つの語句について,それぞれ説明を加えなさい.配点は記述内容について各25点(小計75点),全体を通じての論理構成や文章表現に対する加点が25点.

福祉の磁石

NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)

内閣官房

(2)現在日本の行政の特徴を一つないし複数取り上げ,それがいかなるものであり,いつ頃,いかにして形成されたのか,さらにその特徴をいかなる具体的な事例に見いだすことができるか,また,それについてどのような学術研究が存在するかをあわせて論じなさい.事例ならびに研究については,講義や教科書で取り上げた以外のものでも構わない.配点は100点.

それぞれの成績の取得者数

優   54名

良   241名

可   48名

不可(含む欠席) 118名

履修登録者461名中の単位取得率 74.4%

採点基準と講評

(1)は正確な知識を修得しているのか,(2)は大きなポイントを理解した上で,それを具体的な事象や学術的な研究と結びつけて理解しているのかを確認する問題です.(1)は広い範囲について基礎的な知識を理解していれば,(2)は特定の側面について深く理解をしていれば,十分に解答可能な問題です.いずれについても,単位付与の絶対基準をクリアーしているものに対して,9段階で相対評価をつけ,80点台が15%,70点台が70%,60点台が15%と概ねなるように,各段階に点数を割り当てました.

(1)と(2)のいずれをも解答している場合は,(点数を与えないという選択肢もあり得たのでしょうが)(1)について採点を行った上で,一段階評価を下げるという措置をとりました.

(1)については,3つの項目すべてについて,教科書に書かれている内容を不足なくまとめれば,70点台を与えました.ただし,多くの答案は,いくつかの要素を欠落させているものに留まりました.たとえば,NPMについていうのならば,その定義を述べるだけではなく,具体例としてのPFIや民間委託,日本における導入の事例などまで述べることを求めています.

(2)については,特徴,その歴史的形成,具体的な事例,関連する研究の四ついずれも挙げた上で,それらの関連を論理的に展開していれば,80点台を与えています.特徴として複数のものを挙げている場合は,それぞれについて採点をした上で,最も高い点をつけた特徴の点数を全体の点数としています(たとえば三つの特徴を述べた答案において,特徴1についての採点が75点,特徴2は70点,特徴3は78点であったならば,その答案の点数は78点とする).1つないし複数の特徴を挙げることを求めているのであり,「できるだけ多くの」特徴を挙げるよう求めているのではないのですから,散漫な形で,多くの特徴について述べたところで十分な解答とはなりません.

用語や概念をともかく羅列している解答が散見されましたが,そうした答案は字数あたりの得点効率が悪い結果に終わっているだろうと思います.分析枠組みや概念の説明をしただけで,それが日本の行政の特徴と結びつけられていないものにも,点を与えていません.事例とは具体性を持ったもの,いつどこで誰が何をしたという事実の記述をさすのであり,具体性を欠いた記述では不十分です.また,学術研究の例として教科書を挙げているものがありましたが,教科書は学術研究そのものではありません.

講義で修得した内容を,自分自身による情報の収集や読書と結びつけることで深めた上で,論理的な思考に基づいて,概念や事実について述べることができるようになっていって欲しいと思います.